「現状維持」の意識から、
部門間を超えた協働で新たな企業価値を生む組織文化へ
企業概要
| 従業員数 | 約2万人(連結) |
|---|---|
| 売上高 | 約8,000億円(連結) |
参加者の組織階層
プロジェクトの目的
- 現状維持の風土から脱却し、変化を前向きに捉える組織文化を育む
- 環境変化や競争の激化に対応できる挑戦志向とリスクを取る姿勢を醸成する
- リーダー育成と部門間の連携強化を通じて、持続的に成長する組織基盤を構築する
精密機器メーカーであるA社は、技術力には定評がある一方で、組織の内側に「現状維持を良しとする空気」が根強く残っていました。長年にわたり主要製品を安定的に供給してきたことが自信となる一方で、「今のままでも十分やれている」という意識が組織全体に浸透していたのです。
しかし、事業環境は大きく変化し、顧客のニーズは高度化・多様化しているうえ、国内外の同業他社の成長も見逃せない状況でした。新しい挑戦やリスクを取る姿勢が欠けたままでは、他社との競争力を維持することはできません。さらに、リーダー人材の不足や部門間の情報共有の希薄さも課題として浮かび上がっていました。
こうした停滞感を打破し、変化を前向きに受け止める文化を育むために、A社は「組織文化の変革」をテーマとしたプロジェクトの立ち上げを決断しました。
プロジェクトの成果
- 上下や部門の壁を越えて、率直に意見を交わす対話の風土が形成された
- 社員一人ひとりが主体的に提案し、協働して課題解決に取り組む姿勢が定着し始めた
- 心理的安全性が高まり、挑戦や創造的な試行を後押しする文化が広がった
プロジェクト開始から数か月が経った際の、最も大きな変化は、組織内のコミュニケーションの質が明らかに変わったことです。これまで上下関係の中で意見を出しづらかった場面でも、互いの立場を超えて率直に意見を交わす風土が生まれ始めました。
会議では、限られたリーダーが主導するのではなく、メンバー一人ひとりが自分の考えを持ち寄るようになりました。以前は発言を控えていた社員が自発的に提案を行い、部門を越えた協働が自然に起こるようになっています。
また、「これまで言えなかったことを話してもいい」と感じる心理的安全性が高まり、挑戦を後押しする空気が醸成されました。
組織全体に、正解を探すのではなく、自分たちでより良い答えを創り出していくという意識が広がりつつあります。
プロジェクトの流れ
本プロジェクトはまず「3分間コーチ」で役職や部署を超えた対話の経験を通じ、参加者の固定観念や業務の枠組みを見直す意識を醸成しました。次に「DCD」により、トップダウン型に偏りがちなリーダーシップからフラットで多様なリーダーシップへの理解が広がり、メンバーの提案を受け止め組織全体で価値を創出する行動が増えました。
その結果、心理的安全性が高まり、部署間の意見交換や情報共有も活発化しています。
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01 マネジメントとメンバーの意識変化
10以上の部門から様々な役職者が「3分間コーチ」に参加することで、役職や部署の違いにとらわれず、フラットな関係で対話できる経験を持ったことで、参加者たちの中に、自分の固定観念や業務の枠組みを見直す意識が芽生えた。
違う役職や他部署の参加者との意見交換を通じて、参加者それぞれの視野が広がり、課や部署の立場を超えて相互理解を深めることができた点も大きな変化となった。
普段は発言を控えていたメンバーも、自分の考えや価値観を安心して表現できるようになり、ワークショップ実施後に開催した会議においても発言が増えた。 -
02 リーダーの行動変化
体系的・体験的にコーチングを学ぶ「DCD」によって、固定的なトップダウン型のリーダーシップだけでなく、フラットで多様なリーダーシップのあり方を参加者が受け入れるようになった。
「3分間コーチ」によって増えるようになったメンバーからの提案や発言を、マネージャーが受けとめるとともに、「この提案から、さらに皆で何か新しいものを生み出していこう」と周囲に働きかけるようになった。 -
03 周囲・組織の変化
組織全体の心理的安全性が高まり、従来タブー視されていた意見も出しやすくなり、対話を通じて互いの立場や考えを理解し合う文化が広がった。また、部署や課を超えた意見交換の場が増えたことや、部署間の情報共有や発想力が向上したことで、組織としての柔軟性や行動力も強化された。
今後は、醸成された文化をさらに広げて定着させるとともに、継続的な組織変革をけん引していく次世代リーダーを開発するため、プロジェクトを継続させる計画となっている。