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昨今では、ビジネス環境は日々めまぐるしく変動し、複雑化しています。自社の競争力を維持・向上させるためには、外部環境の変化に迅速に対応しながら、既存の組織のフレームワークのルーチンも変えていくことが求められます。また、そのような変革をもたらす組織をつくる上でも、リーダーには、柔軟なリーダーシップが求められます。

変革に向けて活性化している職場の特徴は、社員同士が率直に意見を出し合い、互いに連携・協力して業務に取り組めている状態です。あなたの部下は、事業環境の変化を前に「これは、チャンスだ!」とポジティブに現状を捉えていますか。あるいは、「今までどおりのやり方を続けられなくなったらどうしよう」と戸惑ったり、「これまでどおりのやり方では、どうしていけないのか」と抵抗感を示しているでしょうか。
組織がどんな状態にあっても、また、どんなタイプの部下に対しても、最大限の効果を生み出すリーダーシップというものは存在しません。その時の組織や部下の状態を見極め、その上で、リーダーがアプローチを柔軟に変えてこそ、組織の変革が加速されます。

下図は、組織を構成する社員の主体性にフォーカスし、変革を生み出す活気のある職場を、部下の「主体性が高いケース」と「主体性が低いケース」の2つに分類し、それぞれのケースにおいて、上司が部下にどのようなリーダーシップを発揮しているのかを示した調査結果です。ここでいう「部下の主体性が高いケース」とは、部下が、積極的に目標設定やアクションを定め自ら課題解決に取り組んでいる状態、さらには前向きに仕事に取り組めている状態を指します。

図:変革に向けた組織をつくるリーダーシップ
変革に向けた組織づくりのために最もポイントとなるリーダーシップは、社員の主体性が低いときは「コミュニケーション」
対して、社員の主体性が高いときは「方向性の提示」である。

主体性※1が低い社員が部下の場合

変革に向けた組織※2 のリーダー(325名)と、そうでない組織のリーダー(99名)の部下からみた上司のリーダーシップ評価の差
= 変革に向けた組織に属する部下回答 - そうでない組織に属する部下回答

全項目で有意差あり(p<.01)

主体性※1が高い社員が部下の場合

変革に向けた組織※2 のリーダー(343名)と、そうでない組織のリーダー(87名)の部下からみた上司のリーダーシップ評価の差
= 変革に向けた組織に属する部下回答 - そうでない組織に属する部下回答

全項目で有意差あり(p<.01)

※1 主体性:積極的な目標設定や、問題解決における主体性の発揮など、部下が主体的に仕事に取り組めている状態。該当する項目の平均スコアが全体平均より高い/低い群で、各群の平均±0.5×[標準偏差]に属する部下を「主体性が高い/低い社員」と定義。

※2 変革に向けた組織:社員同士が率直に意見を出し合い、互いに連携・協力して業務に取り組めている状態。該当する項目の平均スコアが全体平均より高い/低い群を「変革に向けた組織/そうでない組織」と定義。

図:変革に向けた組織をつくるリーダーシップ
変革に向けた組織づくりのために最もポイントとなるリーダーシップは、社員の主体性が低いときは「コミュニケーション」
対して、社員の主体性が高いときは「方向性の提示」である。

この結果から、「部下の主体性が低いケース」においては、変革する職場をつくるためには、まずあなたと部下との「コミュニケーション」のあり方を見直し、関係性を再構築することが求められていることがわかります(左図の結果より)。部下とコミュニケーションを図る際に、リーダーが決して忘れてはならない心構えは、部下の話す内容や価値観を、徹底的に「聞こう・知ろう」とする姿勢です。リーダーがそうした姿勢を見せず、組織の変革のビジョンや目標を部下に伝えても、部下の心に響くことはほとんどありません。リーダーシップの無駄遣いに終わらないよう、リーダーは部下の状態を見ながら、意図して、リーダーシップのアプローチを変えなければならないのです。

一方で、「部下の主体性が高いケース」ではどうでしょうか。部下の主体性は高いものの、組織としては、そのシナジー効果が発揮されず、変革をもたらす職場になりきれていないケースです。そういう場面では、リーダーはまず、組織のビジョンや目標といった組織の方向性を伝え、それについて部下と対話をしていくことが有効的です(右図の結果より)。あなたの語る組織のビジョンや目標が、あなたと部下たちにとっての未来像として共有できると、部下同士の率直な意見交換や対話の中身や、部門間での連携・協力などが、未来を見据えたものに変わり、組織としての変革が加速されることにつながるでしょう。

COACH TIME

主体性の高い部下には、変革に向けた行動を促進していきたい。そんなリーダーにとって、部下との関わり方のヒントとなる一つのエビデンスをご紹介します。

下記は、コーチ(上司)のどのような「関わり」が、主体性の高い相手(部下)を変革へ向けた行動へと促進するのかについて調べた結果です。

部下の自己効力感※1が高く連携している※2

n=46

部下の自己効力感は高いが連携していない

n=38

コーチング開始時から半年後にかけてのコーチングスキルスコア変化量

連携している部下の上司 n=46
連携していない部下の上司 n=38

有意差あり(p<.05) 

※1 自己効力感:ビジョンの明確化や仕事の創意工夫・新視点の取入れなど、部下個々人の仕事のパフォーマンスに関する自己評価。該当する項目の平均スコアが、全体平均+0.2×[部下回答の標準偏差]より高い回答者を抽出。

※2 連携:周囲への積極的な提案や、周囲への積極的な関わりなど、部下同士の関わり。連携している群/していない群は、該当項目の平均スコアが、全体平均±0.2×[部下回答の標準偏差]より高い/低い として定義。

主体性が高く、自己効力感の高い部下に対しては、部下の指導やアドバイスなどは、コーチ(上司)に求められる主要な役割ではありません。最も求められることは、目指す方向に向けて、相手(部下)の変化や成長に気づき、そのことを部下に伝えることなのです。さらに、相手からもフィードバックをもらうことで、コーチと相手とでともに未来をつくっていく。そうしたコーチと部下とのコラボレイティブな関係性が、部下の変革への行動を促進すると言えます。

調査概要

変革に向けた組織をつくるリーダーシップ

調査対象:リーダー854人の部下9,117人
調査内容:Leadership Assessment(LA)
調査期間:2012年9月~2018年2月

COACH TIME

調査対象:コーチ・エィのプログラム・DCD参加者
調査内容:D-meter(DCD独自アンケート)による
調査期間:2015年4月~2020年1月