Biz Coach Magazine

プロフェッショナルコーチによる現場実践コラム

ディソシエーションで視野を広げる

Vol. 144 : 2008/06/26

「プレーヤーとしては非常に技術力も高く優秀な人材なのですが、
 役員としては、もう少しコミュニケーション能力を高めて、
 後継者を育成してほしい」

こうした人事部門からの依頼によってAさんのコーチングはスタートしました。

「自分のコミュニケーションに課題は見当たらない」

これがコーチング開始直後のAさんの認識でした。
そこでAさんが普段よくコミュニケーションを取る部下に、
インタビューをさせていただき、それをもとにコーチングを実施することとなりました。

人事部門の認識と同じく、Aさんの技術力の高さは認めるものの、
「頭ごなしに怒る。威圧的で自分のやり方を押し付ける」
といった意見が全員から出てきました。

インタビューの内容をAさんにフィードバックしました。
「まあ、こんなもんでしょう。
 僕はこれまで、多くの大型案件を成功させている。
 そのやり方を教えてあげているのに、押し付けと思っているなんて…。
 できの悪い人たちに理解させるのは大変なことです。
 部下の育成は難しいですね」

と、自分を正当化する発言をし始めました。

そんなAさんにどんな質問をしたら機能するのでしょうか?

質問には、【アソシエーション】を生み出す質問と、
【ディソシエーション】を生み出す質問とがあります。

【アソシエーション】は、一体化していること、
【ディソシエーション】とは、分離化していることをいいます。
 
コーチは、これを使い分けながらコーチングを行います。

例えば、今回の場面であれば、【アソシエーション】を生み出す質問として、

 ●「部下のみなさんが、そうした発言をする理由は何だと思いますか?」
 ●「部下のみなさんが、Aさんとのコミュニケーションに望んでいることは何でしょうか?」
 といった質問が考えられます。

【ディソシエーション】を生み出す質問としては、
 ●「一般的に私たちが押し付けだと感じてしまうのは、どんな時でしょうか?」
 ●「押し付けだと感じさせてしまう人と、そうでない人とは、何が違うのでしょうか?」
が考えられます。

なぜこうした使い分けが必要なのでしょうか?

問題や状況に直面している【アソシエーション】では、
イメージもふくらみ、当事者意識も高まります。
しかし、【アソシエーション】の質問ばかりでは、視点も限られたものになり、
アイディアも一面的になってしまいがちです。

【ディソシエーション】を生み出す質問を交えることによって、
一旦自分を横に置いて(あるいは俯瞰して)
問題や状況に距離を置いた視点を得ることができ、
全体を掴んだり、冷静な判断をしたりすることが可能になります。

「特に問題はない」という認識のAさんに対しては、
「育成がうまいリーダーにはどんな特徴があると思いますか?」
「御社の中での育成がうまいリーダーとそうでないリーダーの違いは何ですか?」
といったディソシエーションを生み出す質問を多めにしてみました。

後者の質問に対して、Aさんは、
「私の職場のBさんは、自分の成功パターンに固執するところがあり、
 部下の改善提案に対して耳を貸さないところがある。
 Cさんは情報を共有せず、部下もやりにくいだろう」と言いました。

「BさんもCさんも、そしてAさんも、
 高い成果を挙げてきたんだと思います。
 (優秀なリーダーが犯してしまうことについて書かれた本を見せながら)
 リーダーがやってしまいがちなこととして、こうしたことがあるようです。
 それについて、どう思いますか?」

Aさんはしばらく沈黙して、
「自分もこれを読んだ方が良いでしょうか?思い当たるところがたくさんあります」と。

これを機に、Aさんは自分のコミュニケーションを見直すこととなり、
現在もコーチングは続いています。


これを読んでいただいた皆さんも、
例えば、なかなか成果を上げられない部下に対して、

 ●成果を上げられる人は、どういうことを考えて行動しているんだろう?
 ●一般的に人が成果を上げるのはどういう時なんだろう?

など、時には【ディソシエーション】を生み出す質問も
交えてみてはいかがでしょうか?
部下との間に、これまでと違ったコミュニケーションが生まれるかも知れません。

小西俊弘
シニアビジネスコーチ

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