
質問は心の鏡
Vol. 232 : 2010/06/24
管理職に対する集合型トレーニングで、普段部下にどんな質問を
しているのかをお伺いすると、様々な質問が出てきます。
ところが、質問を投げかけているにも関わらず、
「相手を前向きにさせ行動を起こさせる人」と
「相手を困らせ行動をスタックさせてしまう人」が存在します。
その違いは何なのでしょうか。
先日、クライアントのAさんが、営業マネージャー7名を集めて、
業績向上のためのブレスト会議をするというので、
半日間オブザーブをさせていただきました。
そもそもAさんには、相手から自由な意見を引き出せない
という課題があり、周囲からのアンケート結果でも、
相手を萎縮させてしまう傾向がありました。
Aさんが誰に対して、どんな口調、表情、姿勢で発言をしていたか、
私は細かくメモを取りながら会議をオブザーブしました。
「それでは、この期間中どんな取り組みをしてきたのか
発表してください。では、Bマネージャーから。」
名指しされたBマネージャーは、自分の取り組みを報告し、
その報告に対して、Aさんは畳み掛けるように質問を投げかけます。
「で、なんでそれうまくいってないの?」
「じゃあ、これからどうすればいいと思ってるの?」
「はい、えー・・・、なかなか今の状況では、思いつかなくて・・・」
似たようなやり取りがBさん、Cさんと続き、Dさんに至っては、
「すみません・・・」とAさんへの謝罪から報告がスタートしました。
本来自由な意見を言い合うはずのブレスト会議が、
結果的にAさんへの報告会、反省会となってしまったのです。
終了後の振り返りの場で、私は記録した事をAさんに伝えました。
・Aさんとマネージャーという1対1のやり取りが長時間続いていたこと
・目標を達成しなかった理由を問いただす質問が多いこと
・成功事例や新しいアイデアに対しては質問がほとんど無かったこと、など
「マネージャーに考えさせるために質問しているつもりなんだけどね。」
と少し顔をゆがめながら言うAさんに、改めて会議の目的を伺いました。
「一人ひとりが自分の課題を明確にして、お互いに成功事例を
共有化したり、アイデアを出し合って自分の課題解決に活かすこと、
ですかね。」
そして、目的を確認した上で、再度、
「出来なかったことに関する質問」が多く、
「出来たこと、今後可能性のあることに関する質問」が少なかった
事実を伝えて、その理由をAさんにお伺いしました。
「そもそも彼らを信頼していなかったからなのかなあ。
きっと大したことをやっているはずが無いし、
彼らからいいアイデアが出てくるわけが無いと
思い込んでいたのかもしれないな・・・」
Aさんは、自分の心(部下を信じる気持ち)に疑問を感じ始めたのです。
Aさんのように、上司の心(思っていること)が
部下に対する質問として表れることは少なくありません。
特に、強烈な成功体験や、確固とした自信や考えを持った
上司であればあるほど、その傾向は大きいようです。
なぜでしょうか。
それは、過去の成功した自分と目の前の出来ていない部下を比較し、
「俺だったらこんな失敗はしない」
「私だったらもっと簡単にできるのに」と
部下の出来ていない部分に目が行ってしまいがちだからです。
その結果、過去の出来なかったことを問い正すような
質問をする傾向が大きくなってしまうのです。
「この数字しか上げていなかったら成功事例なんてあるはずがない」
「どうせ、ろくなアイデアは出てこないだろう」
というAさんのネガティブな心は、部下に
「信用されていない」、「発言してもどうせ否定される」
という気持ちを芽生えさせてしまったことでしょう。
その結果、
「どうせ突っ込まれるなら、発言するのは極力控えよう」と、
誰も積極的な発言をしない場を作り出すことになってしまったのです。
部下が発言しない時に「やる気が無い、能力が無い」と
相手を嘆くよりも、質問という「自分の与えたきっかけが不適合だった」
と思うほうが生産的です。
あなたは、部下の可能性をどれぐらい信じて質問をしていますか?
上司の心の変化が質問を変え、部下の発言や行動を変える。
大切な部下が未来を切り開いていけるかどうかは、
みなさんの質問次第です。
さあ、目の前の部下を前進させるために、どんな質問を投げかけますか?
山本多佳子
シニアビジネスコーチ


