育成の肝は質問させることにあり Vol. 222 |コーチングファーム コーチA

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プロフェッショナルコーチによる現場実践コラム

育成の肝は質問させることにあり

Vol. 222 : 2010/04/01

私が生まれて初めて企業向けのトレーニングを実施したのは、1999年です。
最初の頃は、進行することに慣れていないせいもあって、
不明瞭な説明をしていたのでしょう。受講者からよく質問が出ました。 
ところが2000年、2001年と年間200日以上のトレーニングを
実施するようになると、どこでどんな質問が受講者から出るかが
だんだん読めるようになっていきました。

「もぐらが出ないうちに、あらかじめもぐらを全部叩いてしまおう」

そんな風に思い始めました。
説明は「完璧さ」が増し、抜け漏れのない講義が完成しました。
それと共に、初期のころに噴出していた質問は一切出なくなりました。
2002年頃でしょうか。

が、、、しばらくして、質問が出ないような「綺麗な」レクチャーを
してしまうことが、実は受講者の学習を妨げているのでは、
と思うようになりました。

弊社のプログラムは、1日、2日の集合トレーニングの後にも、
電話会議やメール、小グループといった様々な形態を使って、
受講者の職場での実践をフォローする仕組みになっています。

その実践段階での受講者の動向を見ていると、
どうもいろいろ質問が出て紛糾していたときの方が、
自分の職場で今までとは違った方法で部下と関わってみるなど、
多くのことを試していたように思ったのです。

質問させるすきのない綺麗なトレーニングは、評価は高いけれども、
学習を促進しないと。

その頃からトレーニングの仕方を180度変えました。
こちらから講義をすることを最小限に留め、
受講者に質問をしてもらうようにしたのです。質問をしてもらって、
それに対して、セオリーを伝えたり、事例を伝えたり、
コーチングをしたりするようにしました。

もちろん、お客様のニーズ次第のところはありますが、
時に2日間のトレーニングで、1日半ぐらいは、受講者に質問してもらい
それに応じるという設定にしました。

受講されている方の表情を見ていて、明らかにメッセージの浸透具合が
変わったのがわかりました。
それに続くフォローのプログラムでも、多くの受講者が
トレーニングを自分ごととして捉え、たくさんの新しい行動を
起こしてくださるようになりました。

「育成の肝は、質問させることにあり。」

そう思うようになりました。
 
最近このことを強く実感する出来事がありました。
この4月から6年生になる息子のことです。

息子は、中学受験のために某塾に通っています。
塾には4年の3学期から通っているのですが、
なかなか成績が上がってきませんでした。
塾の先生と相談し、昨年の暮れから、個別指導の補修に通うようになりました。
この個別指導、何をやるかカリキュラムが決まっているわけでなく、
子供が聞きたいことを質問することによってスタートします。
息子はその個別指導に通う前日になると、何を質問しようか一生懸命考えます。
理科はこれを聞く、算数はこれを聞く、社会はこれを聞くと。

この個別指導に通い始めて、2ヶ月ぐらいでしょうか、
成績が劇的に上がり始めました。
もちろん、個別にわかりやすく指導しくれているというのもありますが、
何よりも大きいのは、息子が自分で質問を考え、
「知りたいことを知り」、それを先生に投げかけたことだと思っています。
 
「育成の肝は、質問させることにあり」

何かを学習するときに、どこがわからないのか、どこを難しいと感じているのか、
何を明らかにしたいのかは、厳密にはその人自身にしかわからないわけです。
そこに一方的なティーチングをしてしまうと、相手が必要としている情報と、
こちらが与える情報の間にギャップが生まれてしまう可能性があります。
相手に質問させることではじめて、相手が必要としている情報を
こちらは投げかけることができます。

加えて、質問をするという作業は、自分の中に、「空白」を作る作業です。
相手の学習に対するモチベーションがそれ程高くないケースでも、
質問を作らせると、相手は自分の頭の中に、
自分では埋められない空白を作ることになります。

例えば「桜に関して何でも質問して」といったとします。
別に桜に関して特に興味はなかったとしても、

「1本の桜の木には何枚の花が咲くのですか?」
「お花見という習慣があるのは日本人くらいですが、それはどうしてなんでしょう?」
「桜はどうして年に1回しか咲かないのでしょう?」

質問を作ると、埋められない空白が自分の中にでき、
それを埋めないとちょっと「気持ちが悪く」なります。
 
つまり、極端に言えば、興味がなくても、質問を作ると、
知りたいという欲求が湧いてしまうのです。
 
さて、4月です。
真新しいスーツを着た新人がみなさんの会社にやってくることでしょう。
次のような試みをしてみたらどうでしょうか?

1オン1で、ひたすら新人さんに質問してもらって答えるという時間を作る。
できれば1時間ぐらい。
あらかじめ新人さんに質問を50ぐらい考えてきてもらって、
それにティーチングしたり、コーチングしたりする。
こちらスタートでは何も教えない、伝えない。

きっと飛躍的な学習が起こると思います。

「育成の肝は、質問させることにあり」

鈴木義幸
チーフエグゼクティブコーチ

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