将来のために今やらなければならないこと Vol. 221 |コーチングファーム コーチA

Biz Coach Magazine

プロフェッショナルコーチによる現場実践コラム

将来のために今やらなければならないこと

Vol. 221 : 2010/03/25

今年のお正月4日に、携帯電話が鳴りました。
電話をくれたのは、Tさん。
Tさんは、5年前、ある生命保険会社の社内コーチ養成のための
プログラムに参加されていた方です。
現在は定年退職されていらっしゃいます。

当時、Tさんはプログラムの中で、ご自分の持論を頻繁に
私にぶつけてこられました。
例えば
「石丸さん、そうとばかりは言えないよ」
「いや そこは厳しく言ってやらなきゃだめだ」
「信念が人を動かすんだよ」

現場で培った経験に裏付けさせたTさんの自説は、
やや押し付けがましさはありましたが、説得力のあるものでした。

Tさんからのお電話に、私は懐かしさを覚え、再会をお約束しました。
1ヵ月後の再会の場で、当時のプログラムの最中の出来事を
語り合いました。

そして、Tさんが長年拠点長として、やってこられたことに
話が及んでいきました。どのお話も、Tさんの拠点長として、
あるいは営業マンとしての信念が伝わってくるものでした。
その中でも最も印象的だったのは、
神戸の営業所の拠点長をされたときのお話でした。

その時、Tさんは阪神大震災に遭遇されました。

営業所のあるビルは倒壊し、Tさんは営業再開に向けて
事務所探しをはじめました。
神戸市内を歩き回る中で、たくさんのボランティアとして
汗する人々に出会いました。
そして、幸い大きな被害にあわずにすんだ自分に
何か出来ることはないかを、考えずにはいられなくなりました。

少なくともこの営業所のお客様にだけでも「元気」を差し上げたいと
考えたのが、お客さま500名を一堂に会するイベントを開催することでした。

そのことをまず部下のマネジャーに相談したところ、猛反発にあいました。

「自分たちの生活が大変なときに、なぜ?」

根強い反発の中で、営業スタッフ一人ひとりと膝を突き合わせて、
諦めずにTさんはご自分の思いを伝えました。

「私は任期が来たら転勤しますが、あなたたちは生涯神戸に住むでしょう。
  だったら、今やっておかなければならないことがあるはずです。
  将来のために。
  それはあなたたちの心を、形あるもので残すことだと思います。」と。

そして、Tさんの一人ひとりに対する説得が、マネジャーはじめ
営業スタッフの心を動かしていきました。

その結果イベントには、300名のお客様が来てくれました。
会の終了時、出口でお客様をお見送りする場面では、
ほとんどのお客様が目を真っ赤にして、「本当の元気をいただきました」と
感謝の言葉を残していかれたそうです。
そして、お客様が帰られた後は、
「所長ありがとうございました」という言葉と共に
営業スタッフ全員でTさんを取り囲む輪ができました。

「将来のために、今、やっておかなければならないことがあるはずだ」

神戸に住んでいる者として、そこで、保険という仕事に従事する者として
営業スタッフ一人ひとりが、このことについて日々考えるようになりました。

Tさんには、仕事を通じて身についた
「お客様の将来に向けて、今自分が出来ることは何かを考える」
という「軸」がはっきりとありました。
そして、そのことを一緒に働く仲間と共有したいと、思っていました。
そのことを共有して、全員で行動することがリーダーとして、
多くの営業スタッフを守ることにも繋がるんだ、
という強い思いがありました。

「誰かの将来のために、今、やっておかなければならないことがあるはずだ」

苦境に立ち、迷い立ち止まるような場面で、この言葉を思い出すと、
私たちは「軸」が決まり、再び勇気を持って
行動を起こしていけるのでは、ないでしょうか。

石丸健一
シニアエグゼクティブコーチ

webからのお問い合わせお問い合わせフォーム
お電話によるお問い合わせ 03-123-4567
  • Biz Coach Magazine
コーチングファーム コーチA  コーチングコラム一覧  Vol. 221 将来のために今やらなければならないこと