アサヒビール株式会社様 | 経営トップ層向けエグゼクティブコーチング | コーチングファーム コーチA

アサヒビール株式会社様/経営トップ層向けエグゼクティブコーチング

執行役員・統括部長向けエグゼクティブコーチング~組織を牽引するトップ・リーダーの育成~

部下の潜在能力を100%顕在化させる組織づくりとは

アサヒビール株式会社 小路 明善氏~上司が部下の“コーチ”であり続けるために~

GPTWジャパンによる「2008年働きがいのある会社調査」で見事5位にランキングしたアサヒビール様。自社の企業風土診断や社員意識調査でも、モチベーションの維持や仕事のやりがい、成長の機会がある、などの項目で非常に高いスコアが出ている。同社の人事部門ご担当である小路明善常務取締役に、人材育成に対するお考えや、エグゼクティブコーチングを受けたご感想を伺った。

聞き手:コーチA 取締役社長 鈴木義幸 / 2008年6月

■上司は、部下が働く舞台を創出し、演出するプロデューサー

―多くの企業や組織がいかに方向性をそろえ、一丸となって企業活動を推進していくかに苦戦する中、御社はみなさんが同じ方向を向いて仕事をされているように見受けられます。何ゆえにそれを実現できているのかを一度お聞きしたいと思っていました。

確かに、当社は社員のベクトルの方向性が統一されているかもしれません。最大の理由は、社員が自社の基幹商品である“スーパードライ”をこよなく好きであるということ。そして、仲間間のコミュニケーションが良い、自社品を広げていくことに対して熱いメッセージがある、といった社風に憧れて入社する人が多いことも挙げられます。

また、トップ自身が頻繁に現場に出向き、社員とコミュニケーションをとっていることも大きいでしょう。トップが自分の言葉で経営哲学を語ることで社員の理解が深まることに併せ、トップにも問題意識などがタイムリーに伝わるのです。トップ自らが経営の透明化を実践し、社員のモチベーション・マネジメントを実践している結果ともいえるかもしれません。

―人材育成の制度面ではどのように取り組まれているのでしょうか?

私は、ビジネスの世界での成長や育成は、日々の仕事の中で実現していくのが大前提だと思っています。職場での上司と部下の関係の中で両者が共に成長していく、ということです。

当社では、平成11年から「管理職」という呼称をつかわず、「プロデューサー」という名称を使用しています。その根底には、“上司の役割は、社員が働ける舞台を創出し、演出すること”という意識があるからです。つまり、上司は社員の成長のサイクルを計画し、働き方をアドバイスし、働きがいにつながるモチベーションを高めていくことが求められているのです。

人は、自分の持っている能力を100%発揮しながら仕事をしていくことに何よりも喜びを感じるものです。困難にぶつかっても、自分の持てる力を100%発揮できる環境や舞台が与えられていれば、苦難を苦難と思わずに乗り越えることができ、それが達成感、あるいは次のモチベーションに結びつくのではないかと思うのです。

■上司が“コーチ”として部下の潜在能力を100%顕在化させれば、組織全体のパフォーマンスも上がる

―その実現のための具体的な方策は?

小さな成功をほめたたえる風土づくり。そして、上司は、部下の話に聞く姿勢をもつ、ということです。すべてはここからスタートすると考え、ラインマネジャーの部下育成能力の養成に力を入れ、コーチングを軸としたOJTを実施しています。上司は部下に対して“コーチ”であり続ける。教えるのではなく、“コーチ”として部下に接し、部下の潜在能力を100%顕在化させるところに力点をおいています。

スーパードライ、あるいは熱く語れる社風にひかれて入社した人たちの集団であれば、その持てる力を100%顕在化させることでモチベーションは継続し、チームや組織、あるいは会社として高いパフォーマンスを最大限発揮できると考えているのです。

―個人の力を組織力として機能していくためのマインド醸成についてはどうお考えですか?

まずは、一人で考えることには限界がある、ということに各人が気づくことですよね。もちろん考え抜くということは大切なことですが、コミュニケーションを駆使しながら複数で知恵やアイデアを出し合う。上司と部下の関係の中でも同じです。方向性は上司が決定、指示しても、それを実現する手段はチームとしてお互いに知恵を出し合う。そういう関係構築が必要なのではないでしょうか。

つまり、上司は、コーチングの技術を駆使しながら、OJTの中で部下に新しいやり方や工夫等、成長のサイクルを計画していく。さらに、チーム運営の中では自由闊達、知恵を出し合うためのファシリテーションをもしていくのです。それにはコーチングの技術が不可欠なのです。

―実際に当社のコーチング研修を導入していただいていますが、成果はいかがでしょうか?

2006年から3年連続でラインマネジャーを対象にコーチング・プログラムを実施しています。定量的な評価としては、仕事へのコミットメントやモチベーションが上がり、職場でのストレスが下がっている、という結果が出てきています。
これらは、コーチング研修を通して上司として部下の考えや思い、能力を引き出せる人が増えてきていることの結果ではないか、と捉えています。

■本人の「気づき」に主体をおいたエグゼクティブコーチングの有効性

―御社ではエグゼクティブコーチングも導入させて頂いています。小路様は、ご自身自らが率先して受けてくださっていますが、そのきっかけをお伺いしてもいいでしょうか?

まず、コーチング研修の効果を知るには自分が体験することが早いと思ったこと。そして、私自身が責任者として複数の担当部門を持つ責務の中では、一ラインマネジャーとして適切なコーチング・スキルを活用しながら部下の能力を100%発揮していかねばならない立場にある、ということです。大きな舞台、組織を担当している分、責任と影響力も大きいわけで、会社に良い影響を出すために自分でもコーチングという手法を実践していこう、という思いからです。

また、私は人生でもビジネスでも、“日々成長”という言葉を大切にしています。成長に終着点はない。この点からも、自分だけの視点だけでなく、コーチ、つまり第三者の目で見て自分はどのような成長が必要なのか、他者の視点やアドバイスも取り入れながら成長していきたい、と思ったのです。

―これまでのセッションを通しての率直なご感想を伺ってもいいでしょうか?

自分が一体どういう人物で、どのような長所や短所があるのか、そして、どういう姿勢で仕事に臨み、人に対してどういう口の聞き方、話し方で臨んでいるのかといったことを客観的な視点で捉える機会を得ることができました。これまでは、とかく強みや長所のみを意識して仕事を進めたり、自分の意見や考えを具現化するために指示したり話しをするといった傾向がありました。また、部下に対して「聞く」姿勢でなかったり、知恵を出し合う場も少なかったと思います。意見は聞いても結局は自分の指示に終始してしまうなど、自分のコミュニケーションの傾向を知れたことも勉強になりました。

―行動面ではどのような変化がありましたか?

まずは笑顔で話しをすることを心掛けました。相手の意見を上っ面で聞くのではなく、何を言わんとしているのかを聞こうとする、うなずく、といった点を心がけました。こうしたことで、「とっつきにくい」「話しづらい」という印象が少し変化したのではないかと思っています。実際には相手がどう思っているかは分かりませんが…。でも、コミュニケーション、会話の量は確実に増えたのではないでしょうか。


―会社の経営に大きなインパクトを与える役員の方のトレーニングや、自己成長の場といったものは、どうあるべきだとお考えですか?

人事的な言葉でいうと、ビジネスマンには、「人物・力量、実績」の3要素が必要だと考えています。「力量」とは仕事を進行していくために必要な能力。「実績」はそれに伴う成果。そして、幅が広い、すなわち懐の広い人物面。この3点がビジネスマンには必要です。

若いうちは、まず「力量」を高めていくことにウェイトがおかれます。その結果、「実績」も上がるでしょう。そして、年齢と共に経験値が高まり、役職が上にいけばいくほど、「人物的な部分」をどう高めていくかが求められるような気がするのです。上位職層には、どれだけ懐の深い、度量のある人間になるのか、といった点がポイントになってくるのではないかと実感しています。

とはいえ、長年にわたって失敗や成功体験を積んできた上位職層に人物的な部分を高めるトレーニングを実施するというのは難しいですよね。そういう意味では、自らの「気づき」を主体にし、今一度自分と向き合う時間をもつという点でエグゼクティブコーチングは非常に有効な手段だと思います。

■部下にとってはマネジメント層が、マネジメント層には人事がコーチのスタンスで関わり続ける

―最後に、長期的なスパンでの人材育成の方針についてお聞かせいただけますでしょうか?

市場環境が刻々と変化する時代にあって、その変化に柔軟に対応する人材をどう育成するかが大きなテーマです。具体的には、グループ経営者の育成や商品開発、マーケティングといったキーポスト部門における人材育成、そして国際人材の育成です。

―そのような中で、人事部門が果たしていく役割とはどういったものだとお考えですか?

人事部が直接人を育てるという時代から、各部門のプロが自らの目で後継のプロを見極め、育てる、という時代に大きく変わってきているのを感じます。

環境変化が著しい中、商品開発といったイノベーションの分野では、ある意味「匠」や「目利きのプロ」を育てる、という域になってきています。以前は、人事部がマーケティング会社の研修を提供したり、営業成績のいい人材をマーケティングに配置していたのですが、それだけでは変化を読み、消費者ニーズに合うマーケティングの真のプロは育てられない時代です。

その道のプロがその目でポテンシャルのある人材を見つけ、育成していく。それを実現していくためのステージや場所、環境整備におけるサポートを担っていくのが今後人事部門の大きな役割になっていくのではないでしょうか。

評価や人材育成、モチベーションアップに対しては、人事部がマネジメント層にとってのコーチであり、マネジメント層は部下にコーチとして接する。そういう環境を維持、創造していくのが我々の使命であると思っています。

―今日は貴重なお話をありがとうございました。

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アサヒビール株式会社 小路 明善氏小路 明善(こうじ あきよし)氏
アサヒビール株式会社 常務取締役 常務執行役員

1975年アサヒビール株式会社入社。東京支社特約店営業部長などを経て、1995年より人事部門を担当。2001年より執行役員として経営戦略・人事戦略・飲料事業などを担当後、2003年~2007年、同社子会社であるアサヒ飲料株式会社の常務取締役および専務取締役を務める。2007年より現職。

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